日本初!国内クリエイターエコノミー調査結果を発表
一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社と共同で、国内のクリエイターエコノミーに関する調査を実施しました。結果を一部抜粋してお届けします。
調査結果ダイジェスト
国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆3,574億円。世界の推計規模の約1割に相当
多様なプラットフォーム・収益化手法の登場、働き方の選択肢の拡大など複合的な要因が市場の拡大に寄与し、コロナ禍でその流れが加速
「コンテンツ」ではなく、クリエイター「個人」に対する”ファン化”が進展
クリエイター活動のきっかけは「自分の創作した物・サービスを発信したかった」が、65%と最多。必ずしも収入を目的とせず、趣味や特技の延長から収益につながっているケースも
専業クリエイターの半数近くが一般的な会社員等と同程度の月20万円以上の収入を得ている
副業として活動するクリエイターの64%、収入を目的としていないクリエイターの29%が収入を得ており、副業・趣味でも数万円の収入を得ているケースも見られる
クリエイターの4人に1人が誹謗中傷を受けた経験有り
潜在クリエイター数は2,200万人にのぼると推計され、市場規模は2034年に10兆円超に拡大が見込まれる
【調査実施の背景】
近年では、動画や文章、イラストなどデジタルコンテンツの提供や自身で制作したグッズやスキルの販売など、クリエイターの活躍の場が大きく広がっています。また、クリエイター活動のマネジメントや事務手続きをサポートするサービスなど、クリエイターの活動を多面的に支援するサービスも登場し、クリエイターを中心としたこれらの経済圏、“クリエイターエコノミー”が拡大しています。
2022年6月7日に政府が閣議決定した、骨太の方針に「クリエーターの創作活動の支援」(※1)が盛り込まれるなど、今後ますます注目が高まることが予想されます。
本調査では、国内の市場規模やクリエイターの収益状況、見えてきた課題
や、今後の成長予測について考察します。
(※1)出所:経済財政運営と改革の基本方針2022 P19
【調査結果詳細】
◆国内クリエイターエコノミーの市場規模と拡大要因
国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆3,574億円。世界の推計規模の約1割に相当
今回の調査で、国内クリエイターエコノミーの市場規模は1兆3,574億円にのぼることが明らかになりました。なお、2021年に実施された海外の調査(※2)では、世界のクリエイターエコノミーの市場規模は約1,042億ドル(1ドル=145円とすると15.1兆円)と推計されており、国内クリエイターエコノミーがその約1割に相当します。
(※2)出所:NeoReach Social Intelligence APIとInfluencer Marketing Hubの共同調査(2021年5月)
<図表1 クリエイターエコノミーの市場規模>
<図表2 クリエイターエコノミーの市場規模算出の考え方>
拡大の要因として、多様なプラットフォーム・収益化手法の登場により、クリエイター個々のスキルや志向に沿った活動が行いやすくなったことが挙げられます。また、政府の働き方改革の一環として、副業・兼業をはじめとした多様な働き方が推進されており、専業クリエイターだけではなく副業としてクリエイター活動に取り組む層が増加したことなどが考えられます。加えて、コロナ禍での可処分時間が増加したことで、クリエイターにおいては活動開始の契機となり、消費者にとってはコンテンツ消費量が増加し、市場拡大を押し上げたと考えられます。
「コンテンツ」から「個人」への”ファン化”が加速
クリエイター活動をとりまく環境にも変化が見られ、「コンテンツ」からクリエイター「個人」に対する、”ファン化”が進展しています。
クリエイターエコノミーが誕生した初期は、コンテンツに紐づく広告で収益をあげるケースが多く、幅広い消費者の関心を集める必要がありました。そこに、モノやコンテンツ、スキルをクリエイターが直接販売できる収益モデルが登場。最近ではクリエイター個人がサブスクリプションを簡単に提供できるサービスや、ファンと交流できるコミュニティサービスなどが続々と登場したことにより、必ずしも幅広い消費者の関心を集める必要がなくなってきています。すなわち、モノやコンテンツの「対価」だけではなく、クリエイター個人の活動への「サポート」としても収入を得られるような状況にあります。
実際にクリエイターは、活動の場を特定のプラットフォームやコンテンツのみに限定せず、目的や収益化手段に応じて横断的にプラットフォームを活用しています。多くのファンを抱えるクリエイターへのインタビューでは、ブログの執筆からクリエイター活動を開始したものの、現在では動画、音声、イラスト等の異なるコンテンツでも収入を得るなど活動内容を広げていました。
こうした背景には、クリエイターが複数のプラットフォームを活用することで、消費者とのタッチポイントが増加し、自身について深く知ってもらうことで、ファンとのつながりを深めたと考えられます。消費者にとっては、SNSやライブ配信が普及したことで、以前に比べていわゆる“推し”の対象を見出しやすい環境となっています。
<図表3 クリエイター活動の変化>
◆クリエイターの実態
専業では会社員等と同程度の収入を得ているクリエイターも存在。副業・趣味でも数万円の収入
15〜69歳の男女のうち、クリエイターとして活動している人の割合は10%でした。ここでのクリエイターは、「クリエイター活動のプラットフォームにモノやコンテンツを提供したことがある」としています。この数値を基に推計すると、国内のクリエイター数は約822万人となり(趣味として活動しているクリエイターを含む)、プラットフォームで活動している人に限定しているものの、すでに一定の規模を持つことがうかがえます。
クリエイター活動のきっかけは「自分の創作した物・サービスを発信したかった」が65%と最も多く、収入を目的としているケースも半数弱あるものの、必ずしも収入を目的とせず、自身の趣味や特技の延長で活動を開始し、結果的に収益につながっているクリエイターも相応に存在すると考えられます。
<図表4 クリエイター活動を開始したきっかけ>
収益状況では、約6割のクリエイターが収入を得ており、収入ゼロのクリエイターを含めた平均収入は12.8万円/月でした。また、100万円/月を超える収入を得ているクリエイターも2%存在しており、クリエイターは高い収入を得るための職業としての選択肢となり得ます。
<図表5 クリエイターの収入分布>
専業・副業別の収入有無では、専業クリエイターのうち、半数近くが20万円/月以上の収入を得ており、黎明期の産業ではあるものの、一般的な会社員等と同程度の収入を得ているクリエイターも相応に存在することが明らかになりました。
また、副業クリエイターの64%、収入を目的としていないクリエイターの29%が収入を得ており、生計を立てるまでには至らずとも、副業・趣味でも数万円の収入を得ることができています。
<図表6 専業/兼業別のクリエイターの収入有無>
◆クリエイターの課題
4人に1人が誹謗中傷を受けた経験有り。トータルサポートに対するニーズが高まる
一方で、クリエイター活動における課題も見えてきました。クリエイター活動を行う上での課題では、収益化や資金獲得、活動時間の捻出に関する課題が上位を占めているものの、お金を払ってでも解決したい課題としては、「法律や税金等の事務処理」や「個人での企業交渉」、「トラブル対応」など、オペレーション面の課題が上位を占めており、創作活動以外も含めたトータルサポートに対するニーズが想定されます。
また、クリエイターの4人に1人が誹謗中傷を受けた経験があることも調査で明らかになりました。今後、クリエイターエコノミーの拡大に伴い、誹謗中傷に悩むクリエイターも増加する可能性があり、行政とも連携しつつ、業界やプラットフォームとして対処することが求められます。
<図表7 クリエイター活動を行う上での課題と、そのうちお金を払ってでも解決したい課題>
◆国内クリエイターエコノミーの将来性と成長に向けた課題
個人の自己実現のみならず、経済成長のエンジンとなる可能性を秘めている
現時点での国内の潜在クリエイター数は2,200万人にのぼると推計され、前述した現在クリエイターとして活動している人と合わせると、その数は3,000万人を上回り、国内の経済成長に寄与する観点でも大きなポテンシャルを秘めていることが分かりました。
今後も同程度のペースで市場が拡大した場合、クリエイターエコノミー市場規模は2034年に10兆円を上回ると試算できます。
<図表8 クリエイターエコノミー市場規模の将来予測>
このように、クリエイターエコノミーは、個人が創作を楽しむことだけでなく、日本経済の成長のエンジンとなる可能性を秘めていることが明らかになりました。
一方で、個人ないし小規模のグループで活動することが多いクリエイターは、トラブルの対処や企業との契約、著作権、税務等に関する知識が十分ではなく、それらが活動の妨げとなる懸念もあります。誹謗中傷問題への対処なども含め、規制の緩和や法律の整備等によって社会環境を整えるとともに、クリエイターを包括的にサポートしていくことが必要であり、行政、業界が一丸となることで、更なる市場成長を実現することができるでしょう。
【調査概要】
◆レポートの全文は以下よりご覧いただけます。
https://www.murc.jp/report/rc/report/consulting_report/cr_221017-02/
上記資料は、著作物であり、著作権法に基づき保護されています。著作権法の定めに従い、上記調査結果を引用する際は、必ず「出所:三菱UFJリサーチ&コンサルティング」と明記してください。