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文化庁に「簡素で一元的な権利処理の在り方」に関する意見を提出しました

2021年10月14日、クリエイターエコノミー協会は、文化庁著作権課に対し「簡素で一元的な権利処理の在り方」に関するパブリックコメントを提出いたしました。

現在文化庁は、文化審議会著作権分科会基本政策小委員会において、DX時代の著作権制度・政策について幅広い検討を行っています。

多様なクリエイターの状況をふまえた著作権制度に関する方策を提案することで、クリエイターが活動しやすい社会環境の実現につながることを期待し、文化庁に意見書を提出いたしました。(意見募集要領はこちら

クリエイターエコノミー協会が意見書に記載した全文は、以下の通りです。

目指すべき方向性と留意すべき点

【1】クリエイターが販売活動や発信活動をするための様々なプラットフォームが出現したことにより、クリエイターの創作活動の場が大きく広がるとともに、他人の著作物を利用する者が自らも著作物を生み出し、さらにその著作物を第三者が活用する好循環が生まれる素地ができてきている。しかし、現状では、著作物の利用は、著作権者から個別に許可を取得することが原則となっており、クリエイターがそのような許可を取得して、新たな創作活動につなげていくハードルは非常に高い。

そこで、クリエイターの著作物(オンライン・オフライン問わず)の利用を活性化するため、簡素な手続きで著作物を利用できる仕組みを構築することが求められる。

他方で、創作物はクリエイターの思想・感情を表現したものであることから、著作権を有するクリエイターの意思も尊重する必要がある。そのため、著作権者が利用を全部または特定分野において拒否する場合には、オプトアウト制度などにより、かかる意思が尊重されるべきである。

また、無料記事における適正な範囲内での一部抜粋など、著作権者への悪影響が乏しく、かつ、報酬を支払うことが現実的ではない利用に対しても報酬請求をしていくことには慎重であるべきである。

【2】仮に、拡大集中許諾制度を採用するとしても、高額な著作権料が設定されると、著作物を活用できる者が限られてしまうことから、同制度の管理者は、あくまでも創作活動の活性化の観点から、適正な著作権料を設定し、幅広い利用を促すことで創作活動を活性化するとともに、著作権者が、薄く広く著作権料を得られるようにすべきである。また、二次創作活動については様々な明示または黙示のルールのもと運営されている現状にかんがみれば、一律に報酬請求等を行う拡大集中許諾制度にはなじまず、制度の対象からは除外すべきである。

【3】仮に拡大集中許諾制度を採用する場合は、権利者に対してだけでなく、利用者側にも周知を行うことで、不注意による無断利用を減らし、適正な利用が促進されるようにすべきである。

【4】クリエイターは、通称で活動し、実名を伏せておきたいことも多い。そのため、実名を出さずとも著作物を利用する仕組みができることが望ましい。

想定される場面

【1】著作物の活用により新たな著作物が生まれるためには、多様な著作物を簡素な手続きで活用できることが望ましく、インターネット上のコンテンツだけでなく、従前から存在するオフラインの著作物についても、容易に活用できるようになることが望ましい。

【2】クリエイターが販売活動や発信活動をするための様々なプラットフォームが出現したことにより、クリエイターの創作活動の場が大きく広がるとともに、他人の著作物を利用する者が自らも著作物を生み出し、さらにその著作物を第三者が活用する好循環が生まれる素地ができてきていることから、簡素な手続きで許可が取得できるようになれば、そうしたクリエイターが薄く広く活用することが期待される。

具体的な方策

【1】デジタル化がすすみ、容易に複製が可能となった現在において、個別の著作権の利用を追跡することは困難であることにかんがみれば、インターネット上の利用については、音楽以外の分野においても、プラットフォームに対する包括許諾により、クリエイターの著作物の活用を活性化することも考えるべきである。

【2】仮に現状の制度から変更がなされないとしても、現在は、著作権者の許諾条件が公表されていたとしても、その条件が著作権者によって多様であり、クリエイターがかかる条件を正確に理解して活用することのハードルは高い。そこで、標準的な許諾モデル及びかかるモデルに関する平易な解説の整備が求められる。

【3】利便性の観点から、利用料については電子マネーなど多様な決済方法が導入されることが望ましい。